上眼瞼の手術その5
今まで解剖が大事だとさんざん申してきましたが、解剖の知識が逆に現実を見誤らせることがあります。
解剖がすべてだと思い囚われすぎると解剖学的な名前のない構造物は、存在していても認識できなくなるからです。
手術中は、目の前にあるものを素直に見る目を失ってはいけません。手術中は決して思い込みで突き進んではいけないということです。
例えば上眼瞼挙筋腱膜でも「1枚のもの」と決めつけてしまうと一番重要なものを見失うことがあります。
数枚が重なっているかもしれない、それがばらばらになっているかもしれないと思って手術をすすめると全然違った結果になります。
結論から言うと挙筋腱膜の中でもっとも求心的な、つまり眼窩脂肪に一番近い膜、これが一番パワフルな腱膜であることが多いのです。
だから隔膜を切開し、必ず眼窩脂肪を確認することが重要になってきます。
このはがれてしまっている求心的な膜を遠心的な膜(一般的に挙筋腱膜と思われている膜)に固定するだけで開瞼が十分になることがあり、これを瞼板にまで固定してしまうと場合によっては瞼が上がりすぎてコントロールが難しくなることがあります。
上眼瞼の話が続きましたが、まだ3分の一も進んでいません。しかし同じテーマが続くと飽きますのでいったん上眼瞼をお休みして、次は鼻について記事を書きます。