美容外科医になるためにその2~形成外科の経験がない美容外科医がいるのはなぜか
前回、美容外科医でも形成外科の経験や形成外科の専門医を持っていないドクターがたくさんいることを書きました。
今から25年ぐらい前までは、形成外科という科がほとんど認知されていない時代で、私が医学部を卒業したのが今から30年前、当時母校には形成外科はありませんでした。
さらに当時日本で行われていた美容外科手術のレベルでは、形成外科の研修を必要とするほどのものはありませんでした。
しかし時代が下り、医療の進歩とともに、美容外科でも新しく複雑な手術をするようになると、今までとはちがう基礎的な研究・臨床研修が必要になりました。
特に長期的に良好で安定した結果を得るためには、相当な基礎的研究・研修を積むことが必要になります。
具体的に一例を上げると、医療用人工物をもちいた美容の手術をする場合、材料そのものの性質や体内での変化変質など基礎的な研究も必要であり、材料そのものを扱ううえで臨床的なデータの積み重ねが絶対に必要になります。
戦後間もなく行われた怪しげな注入物による美容整形で、患者さんに不幸な結果をもたらしてしまった事実を考えると、そのころの幼稚な美容外科レベルでは当然の結果だったと理解できます。
はっきり申し上げて埋没法による二重や包茎手術をメインとする程度の美容外科なら、形成外科など外科系研修は必要ありません(昨日までメスを持ったことのないドクターでもなんとかできます)。
しかし、この情報化時代、患者さんのほうが高度な手術方法を指定してきて、美容外科で行われる手術はどんどん複雑化してきています。
その要望に応えるためにもこれから美容外科医を目指すドクターは、少なくとも外科系研修できれば形成外科研修を5年以上することが必要と考えます。
さらにこれからの社会的な流れの変化からいえば、形成外科の研修を修めて形成外科専門医をとってから美容外科を目指されるといいと思います。
そのあたりの社会的な事情の変化については次回詳しくお話ししたいと思います。