美容外科医になるためにその4~形成外科専門医は必要なれど
3回にわたって、これから美容外科医になろうとする人は形成外科の研修と専門医が必要になる、ということを解説してきました。
誤解をしてはいけないのは、美容外科医になろうとする人にとって、形成外科は「必要条件」ではあるが「十分条件」ではない、ということです。
私が形成外科をメインにしていたころ、同僚の中には美容外科をやや軽んずる傾向のドクターを見受けることが多く、形成外科をやっていれば美容外科などすぐにできる、という雰囲気がありました。
逆に形成外科出身でない美容外科の先生の中には、形成外科医のそのような「慢心」を嫌っている方も見受けられました。
何度も言うようですが、美容外科と形成外科は一見近い科に見えますが、中身はまったくちがいます。
それが証拠に、うちのクリニックに修正目的で相談にこられる患者さんのなかで、重症なのは形成外科出身のドクターの術後が圧倒的に多いのです。
形成外科医のなかでも手術にかなり自信のあるドクターは、なんでも手術で治せる、と考えがちです。
もっと言うと手術をするのが目的のようなドクターもいます・・(根っから手術好きなのでしょうね)。
私の考えは、美容外科診療において手術はあくまで手段の一つで手術以外の方法にも熟知していなければ、患者さんの美容満足度をあげることについて、「澄んだ眼(まなこ)」をもって考えることはできない、ということです。
最初から手術ありきでカウンセリングをしないように心掛けているのはこういった理由があるからで、場合によっては患者さんの希望する手術をあえて断ることがあるというのもそういう理由です。
美容外科医は手術がうまくなければいけないのはあたりまえですが、それを目的にしてはいけない、というむずかしさを重々わかったうえで診療にあたるというのが真の美容外科医の姿ではないかと考えています。
手術の絶大な効果を知れば知るほど、手術が患者さんに及ぼす影響に畏怖の念を抱くことを忘れてはならないと肝に銘じて診療にあたっています。