美容外科医になるためにその1~美容外科に形成外科が必要なわけ
形成外科の専門医を持っていない美容外科の先生はたくさんいます。
むしろ、形成外科の専門医をもっていない美容外科の先生のほうが持っている先生よりも多いかも知れません。
そのあたりの事情に少し詳しい患者さんの中には、形成外科の経験のない美容外科医は手術が下手だと思っている方がいるようです。
しかし実際、美容外科の手術が上手とか下手とかは、形成外科手術の経験の有無とはあまり関係がないようです。
形成外科医でも手術がそれほどうまくない人もいるし、形成外科以外の外科系の経験があって美容の手術を器用にマスターしている先生もいます(さすがに美容外科以外でメスを握ったことのない内科系ドクターが美容外科の手術をするのはどうかと思いますが・・・)。
それではなぜ美容外科医に形成外科の研修や専門医がいると考えられているのか・・・。
外科系には、形成外科以外に、腹部外科、胸部外科、心臓血管外科、脳外科、整形外科、泌尿器科、眼科、耳鼻科などがあります。
そのなかで形成外科が選ばれる理由は、それが美容外科の手術をするうえで結果的に一番効率のいい研修になるからです。
形成外科や美容外科は扱う分野が「体表」を主な対象としている点や、見た目を改善することを目的としている点などで共通することが多いと考えられているからです(形成外科以外の外科系の分野は、機能的な改善を目的としています)。
顔面の傷を縫合するという点で考えてみると、いきなり美容外科で練習するのは傷のない顔面に一旦傷をつけるわけですから患者さんに迷惑をかける可能性がありますが、形成外科には外傷によって既にできてしまった傷があるわけですから、患者さんに損失をあたえてしまうことなく縫合のスキルをアップすることができます。
それ以外にも、形成外科の研修が美容外科医に役に立つ点は、いくつかあります。
一つには形成外科では創傷治癒過程を常に考えながら傷を扱うので、その経験が傷を目立たせてはいけない美容外科の手術をするうえで役に立つといえます。
また形成外科では傷を速やかに合併症なく治癒させることを学べる点でも、それが美容外科の手術を行う上で役立ちます。
もう一つは、形成外科では医療用異物(シリコンなど)の取り扱い方を学ぶことができる、という点で、ほかの科とは決定的に違う研修ができる科といえます。
美容外科は形成外科の一分野ではありませんが、考え方に共通したものがある点でほかの科の研修よりも形成外科を研修したほうが無駄なく美容外科の基礎を身に着けることができると考えられるわけです。