美容外科手術でトラブルを避けるために18
前回の下眼瞼脱脂術に続いて今回は「下眼瞼切開術」です。
下眼瞼脱脂術が比較的安全に行える手術に比較して今回の「下眼瞼切開術」は顔面の美容外科手術の中で最難関の手術の一つです。
その理由は簡単です。
効果を上げるために皮膚を切除すればするほど下眼瞼外反のリスクが高まる「二律背反」だからです。
リスクを恐れ控えめな手術をすると「効果がない」とクレームになります。
また年齢とともに下眼瞼自体が緩んできて外反を起こしやすくなるところも、この手術が必要になるご年配の人ほどリスクが高いことになります。
この手術で必要な考え方は、「皮膚で引っ張らない」というフェイスリフトでもおなじみのやり方です。
フェイスリフトで引っ張り上げる担い手としてのSMASは、この手術では「眼輪筋」にあたります。
眼輪筋を弁として作成し、これを吊り上げて眼窩外側骨膜に固定する「筋弁つり上げ術」を行います。
それによって生じた余分な皮膚だけを切除するようにします。
もちろん術後に後戻りする可能性もありますのでそれを見込んで控えめに皮膚切除し、術後の検診をしっかりしてどれぐらいが適切な皮膚切除幅なのかを自分自身でつかんでおくことが重要です。
術後の合併症として下眼瞼外反だけでなく、下眼瞼自体が縮んで拘縮を起こすことがあります。
原因として考えられるのは、術後に血種ができて眼輪筋下に瘢痕拘縮が生じ下眼瞼自体が拘縮する可能性です。
私はとにかく眼輪筋下で剥離するときも丁寧に止血しながら、均一の層で剥離することを心がけています。
難しいといってもこういった基本をきちんとすることで多くの合併症は防ぐことができます。
いずれにしてもこの手術は美容外科医にとって上級者向けの手術であることは間違いありません。