美容外科手術でトラブルを避けるために85

前回書いたフェイスリフトの矛盾について考えていきましょう。

たるみのバランスを考えながら、患者さんの気になる口元のたるみをいかにして最大限解消できるか。

まず第一に考えられるのは、バランスを崩さないように引き上げる量を手加減する、という手です。

切開をしてまで引き上げるのにこういったマイルドな引き上げで許されるのかについて、倫理的な問題は別にして、手術結果をめぐるトラブルを避けるという立場から言えば、このことを術前に正直にお話しするのが我々の立場です。

まずはほほを斜め上後方にめいっぱい引き上げ、ほかの部位のたるみとの関係をお見せして状況の説明をします。

気にならない様子であればその手術だけでOKとします。

もし目元や目じり、首やおでこのたるみが気になるようであれば、そこの手術の必要性を説明します。

もし広範囲な手術を希望されない、となれば顔全体のバランスを崩さないようにするためにマイルドなフェイスリフトをするかいっそのこと非侵襲的治療をお勧めするようにします。

切開するフェイスリフトを考えている患者さんにとって悩ましい判断になりますが、ここが術前の説明で一番重要な問題になりますので十分な時間をかける必要があります。

美容外科において本当のインフォームドコンセントというのは、こういったことまで患者さんに説明する必要があり、決して患者さんの希望する方法をそのまま請け負って手術することではありません。

これは我々にとってかなりしんどいことであり、場合によっては患者さんを迷いに迷わせてしまい結果的に治療に逡巡してしまうことになるかもしれません。

しかし、トラブルを避け患者さんの術後の満足を第一に考えるのであればこれが王道である、というのが私の考えです。