脂肪注入について 5

医学的にいう「新しい脂肪注入術」をうたうには、生着率アップを理論的に証明することも大事ですが、実際に人体に注入した後に生着率(残存率)がアップしていることを証明する必要があります。

しかし実際に人で証明しようと思うとなかなか難しい問題があります。

前回のワクチンの話で考えてみても人体で有効性を証明するのが最終段階になりますがこれに一番時間がかかります。

今回のコロナワクチンの例を見ていますとこれはある意味で人体実験です。

医療提供側も患者側も偽薬か新薬か全くわからないようにして半々で投薬して結果的にどちらに有効性がみられたか、という厳しい臨床試験が行われています。

これを美容外科に当てはめるには無理があるとしても、少なくとも新しい治療方法をうたうのに従来の方法とどれぐらい違うのかが証明されていないというのは医学としてまずいのではないかというのが私の意見です。

ワクチンの例では人命がかかっていますので、ある意味人体実験も許される状況があります(もちろん倫理的に患者さんに不利益が与えられないような配慮はされているとは思いますが)。

美容医学でこれは通用しません、何故なら不要不急の医学ですからどのような形でも患者さんに不利益が生じてはいけないのです。

以前脂肪注入後の脂肪残存率を証明するためにCT検査を用いた論文がありましたが、CTによる被ばくを考えると患者さんへの不利益は正当化されるとは思えません。

要するに脂肪注入後の脂肪残存率を証明するのには、その方法をよく考えないといけないという大きな壁が存在するのです。