若返り手術その1
最近の記事は、形成外科研修を終えて美容外科医療に本格的に取り組もうとしているドクターに向けて書いています。
若返り手術にはいろいろありますが、細かいことを書く前に全体的な総論についてのべます。
総論は退屈なものですが、これをおろそかにすると必ずどこかで治療に行き詰り、美容器械の奴隷のような美容外科医になってしまいます。
患者さんの希望に合わせながら最大効果を出していこうとすると一変通りの治療方針では対応しきれなくなる時がきます。そんな時に役に立つのが基本に立ち返って患者さんの顔そのものをよく観察し何が必要なのか自分で考える力です。
私の考えでは、若返り手術というのは顔におきた経年変化をもとに戻すというよりは、若く見える顔にする(極端に言うと別の顔にする)ということだと思っています。
もとに戻すということであればレーザーや注入のほうがむいているかもしれません。
メスを入れる以上は若く見えなければ意味がありません。
若く見えるとはどういうことか?まず美容外科医の考えることはそれです。
次に手段としての手術は何が必要か、ですが、その時の方針はボリュームコントロールと皮膚のテンションを適正化するという二つの立場から考えることにしています。
それについてこれから詳しく書いていきます。
若く見える顔で一番大事なことは顔が小さく見えるということです。
誤解してはいけないのは、「小さく見える」ということで「顔を小さくする」ことではありません。
具体的に言えば顔の下半分を逆三角形に、上半分を丸く、よく言うのはハート形の顔の輪郭に近づけることです。
下半分を逆三角形にする手段として、ボリュームをコントロールすることと皮膚のテンションをあげること、になります。ボリュームコントロールの手段として、脂肪吸引・脂肪注入 各種骨削り 咬筋BTX注入 プロテーゼ挿入などが考えられます。
これと併用して皮膚のテンションを上げること、RF(高周波)やHIFU(超音波)でもいいでしょう、手術ならフェイスリフト スレッドリフトになります。
この二つ、ボリュームコントロールと皮膚のテンションアップ、を上手に組み合わせるには、患者さんの顔をよく見て何が必要かを考えます。両方の手術が必要であることが多いのですが、その場合どちらを重点的に考えるといいか、具体的にどちらを先に治療したほうがいいか、などを吟味します。
いわれてみれば当たり前のことをつい忘れてしまって、患者さんの言われるがままに治療をすると思わぬ結果になります。
皮膚のテンションのない状態で脂肪注入だけしてしまいぼこぼこになってしまった、皮膚のテンションはそこそこあっても急激な骨格の変化に皮膚の余剰が発生し、たるみが生じかえって顔が大きく見えるようになってしまった、肉付きの薄い患者さんにフェイスリフトをして若返るどころかかえって老けた、という症例は結構あります。
基本的な考えに従って、思いつきではなく綿密な観察のもとに理論的に導きだされた治療方針を基本にすることが重要です。
ここは患者さんの希望を聞きいれることも大事ですが、いいなりになって請負業者になってはいけません。