若返り手術その10

今回は咬筋より前方にSMASはあるか、そこまで剥離する意味はあるのか という話です。

解剖学的にはSMASらしきものはあるのでしょうが、手術中に見てもほとんどわかりません。

先にも書きましたが、そもそもSMASは最初からそこに存在しているものではありませんし、顔の前方に向かっていくとどんどん薄くなってますます確認するのが難しくなっていきます。

実際に超音波画像で診ても耳前部から咬筋前縁まではSMASを確認することはできますが、それよりも前になると急に不鮮明になります。

また文献によっては大頬骨筋周囲まで剥離すると書いてありますが、実際にやってみるとかなり大変で、顔面神経がどこを走っているかわからないのでとても不安です。

要は、SMAS弁をけん引したときに口元近辺までその力が伝わっていれば十分なので、もし伝わり方が不十分な時にはさらに剥離を進めるかリガメント処理を追加するようにすればいいと思います。

その方針でSMAS弁の下の剥離を進めていくと、だいたい咬筋前縁をちょっと超えるところまでの剥離で十分だということが分かるようになりました。

皮下の剥離範囲も、皮膚切除するのに必要な範囲としています。

皮下の剥離を法令線とかマリオネットライン付近までする先生もおられますが、術後の腫れ方やリスクを考えると口元の皮膚直下のたるみをとる目的なら皮下剥離して引っ張るよりも糸を併用したほうが無難だと思っています

私は、今まで学会で何度も発表してきたスレッドリフト(シルエットリフト®)を好んで用いています。

糸については、次回以降で詳しく述べます。