若返り手術その11

今回は、今はやっている「糸によるリフト」についてです。

まず美容外科の手術の大原則に戻ってみましょう。

「傷を小さくしたり、手術で手を付ける範囲を狭くする場合、効果を出せば出すほど不自然になる」でしたね!

これは若返りの手術にも当てはまることをずーっとお話してきました。

効果のある手術を期待するのであれば、SMASをきちんと処理して、皮膚剥離範囲も必要十分に行うことが大事です。

しかし「糸によるリフト」を考えてみると傷はほとんどつけない、皮膚を剥離する必要がない、など美容外科手術の原則に当てはまらないので、効果を期待してはいけない手術になってしまいます。

実際に「糸によるリフト」でトラブルになるとすれば、これで大きな効果を期待した場合(患者さんも医者も)に考えられます。

「心優しい」世の大部分の美容外科医は、私のように本当のことを言ってしまって患者さんの期待を裏切るようなことはしません!

「手術ほどの効果は難しいけれど、何とか糸でやってみましょう」と優しく対応してくれます。

最初は4本~8本、徐々に糸の本数も増えていきます。いつか本人が納得できる効果が「虹のかなた」に出るはずと信じて、気づいてみればなんと顔に100本の糸が・・・実際の話です。

なぜこうなってしまうのか。

よく考えてみればあたりまえですよね。大原則に戻って考えてみましょう。

まずフェイスリフトは「面」で引き上げるべき所を「線」で引き上げることによる問題がひとつあります。これは本数を増やせば「線」が「面」に近づいていくことでなんとかなるかもしれません。

もう一つの問題は、糸による引き上げは、たるみを移動するだけで皮膚切除をしていないので解消しているわけではありません。上に移動したたるみは必ず後戻りの原因になります。

結論は、糸単独でたるみ引き上げを考えると、かなりの本数が必要であることとたとえそれだけ本数を入れられたとしても効果は数か月で消えていく、という理論通りの経過になります。

こういったことをよく理解したうえで、それでも糸を希望される患者さんがおられれば糸によるリフトも悪くない、というのが私の考えです。