若返り手術その7

フェイスリフト(FL)におけるSMAS法の本当の意味について書いていきます。

そもそもFLの目的は、顔や頸の前方(中央)の部分のたるみを取りたいという患者さんの希望をかなえることです。

決して耳の前のたるみをとることではなく、ほうれい線や口元のたるみ、フェイスラインなどの改善がみられなければ意味がありません。

たるみが気になる部分に直接メスを入れられればいいのですが、さすがに顔の正面に傷をつけるのはタブーです。

頭髪の生え際や耳の前に傷をつけるのは、そこが目立ちにくいという理由からですが、たるみ改善という意味では効率がいいわけではなく、むしろとても悪い方法といえます。

例えば口元のたるみを取るのにそこからかなり離れたところの皮膚を切り取って引っ張り上げるわけですから。

耳の前から前方に皮膚をはがしていって、皮膚を担い手として引っ張り上げるかわりにもっと丈夫な伸展性のない筋膜(SMAS)を担い手とすれば、少しは効率的に顔の正面のたるみを取ることができる、これがSMAS法です。

SMASを後方に牽引するときに、顔の正面に牽引力が伝わっているかどうか確かめながらSMASの下をはがしていきます。

具体的にいうと皮下をはがしていって、次に広頚筋を確認後この直下をはがしていきます。ここが一番難しいし個人差があるところですが、広頚筋の直下にあるわずかな脂肪組織(本当にわずかです)を確認しこれを下に落とすようにして広頚筋直下に入ります。

この層をキープしながら頭側に剥離を広げていくことでSMAS弁が出来上がります(たとえは悪いですが、魚の3枚おろしです)。そこから耳下腺前縁を確認しさらに前方に剥離をすすめ、バッカルファットを確認します。

ここまででもとても神経を使います、何故ならこの剥離層の直下に顔面神経がわんさか走っているからです。

美容外科医が最も恐れるFLの後遺症の一つに顔面神経麻痺があります。乱暴な剥離をすれば、たとえ神経を切っていなくてもマヒを引き起こすことがあります。

少し専門的な記述になりましたが、わかってもらいたいのはこの操作には慎重を要するので時間がかかり、早くて片側30分、難しい患者さんだと1時間は十分にかかるということです。

しかもこれで終わりというわけではありません。

何故ならここまで剥離が終了してSMASを後方にけん引しても、その力は顔の正面までほとんど伝わらないからです。

以後、次回へ続く