空間認識力

手術をするドクターを術者といいますが、術者にとって手術に一番必要なもの(資質)について。

それは「空間認識」力と考えます。それは「実際に見えているもの」から「見えていないもの」を推測して位置関係、距離、方向を割り出していく・・力です。

手術では、あらかじめ解剖によって臓器や組織の位置関係を頭に入れて臨みますが、術中に見えてくるものはそのごく一部だけです。術者は、自分の視界に見えているものから全体の位置関係を頭にイメージしながら目的の部位にたどりつこうとします。それが正確にイメージできればできるほど手術の精度とスピードが上がっていき、結果的に「手術がうまい」という状態になります。

この力はある程度天性のものかもしれませんが、努力によって身に付く部分もあると思います。

似たような話で大学生の時に友人から聞いた話で強く印象に残っているものに、サッカーの話があります。

サッカー選手に一番重要な資質はなにか、という話で、ふつうはずば抜けた体力というように考えやすいのですが、そうではなく、「目」だという話でした。その時は、視力のことかな~と解釈していましたが、今回のワールドカップを見て思ったのは、この空間認識力のことではないかと気づきました。

我々はテレビでグラウンド全体を見ることができますが、実際にグラウンドに立っている選手には全体を見ることはできず、それとはまったくちがう風景を見ていることになります。その景色から我々がテレビで見るような図(俯瞰図あるいは鳥瞰図ともいいます)に近いイメージを持つことで初めて絶妙なところに移動あるいはパスを出すことができます。それを正確に一瞬にして描くことができる選手が優秀な選手ということができます。

空間認識力はゴルフなどほかのスポーツでも大事なものだと思います。

手術もメスやはさみで正確に切ることができる以前にまずこういった空間認識力がないと手術はなかなか上達しないし、逆に意識的に使うようにすれば飛躍的にうまくなる可能性もあります。