消えゆく「過剰品質」

最近あるドイツ車の宣伝に「Das Beste oder nichts」という言葉が盛んに使われるようになりました。聞いたことがある人も少なくないのでは・・。

この車メーカーは以前からこの標語をカタログなどに必ず載せていました。今のようにそれを宣伝につかう、ということはありませんでしたし、その時は「最善か無か」という日本語の訳をさりげなくつけていたと記憶しています。

ここのメーカーの車を保有するようになってから3台目、20年近く経ちますが(ちなみに私の性格はこの車とあまり合わないので、最近はもっぱら奥様用になっています・・)、乗り出した当時は本当にこの車づくりのコンセプトに深く感銘を受けたものでした。

乗っていてもボディ剛性が優れているのでどんな高速で運転してもミシッともいわないのです。ボディの造りが明らかに「過剰品質」でした。

ところが最近3台目のここのメーカーの車を保有するようになってから、その造りがすっかり変わってしまったことに驚きました。何もかもが楽チンになりそれはそれでいいのですが、以前の「過剰品質」は全く感じられなくなってしまったのです。

いつからこんな風に・・。ちょうど10年ぐらい前からここのメーカーは「グローバル戦略」を目指すようになったのですが、おそらくそのころからものづくりのコンセプト優先がコスト優先にがらりと変わってしまったと考えられます。

メーカーの規模が大きくなるとともに失われてしまったものは、皮肉にもこのメーカーの一番大事にしていたものだったのです。

以前は、今のように宣伝で連呼しなくてもユーザーには周知のことであったのです。連呼される「Das Beste oder nichts」が今となってはかえってしらじらしく空しく聞こえます。