小切開は簡単か

小切開による重瞼術について・・です。

傷が短くて(全切開よりも)整容的に優れている、ということがこの手術の売りのようですが、はたしてそうでしょうか?

実は、当クリニックでお引き受けする他院の重瞼術の修正のうちの2割ほどは、小切開の修正もしくは小切開の既往のある患者さんの修正です。

当院においては埋没法のあとの全切開による修正が一番多いのですが、小切開の修正の場合、瞼に加えられたダメージは埋没法の術後にくらべて比較ににならないほど大きいものです。

以前このブログで書きました「ミューラー筋」まで切断されていた患者さんも小切開の術後でした。

短い創から瞼全体の解剖を把握して適切な手術をすることは意外に難しく、とくに小切開で幅広の二重をご希望の場合、ダメージばかりが大きくしかもラインが取れやすいというように、患者さんにとっては何もいいことがないと考えています。

昨日も書きましたが、瞼の手術のキーポイントである挙筋腱膜を確実に同定するには、ある程度の術野(皮膚切開によって得られる視野)が必要です。

患者さんにとっては、傷が1mmでも短いほうがいい、とお考えになる気持ちもわからないではないのですが、一番大事なことは手術が安全におこなわれ、そして何よりも確実な結果が得られる、ということです。

もし瞼にすこしでも傷をつけることに抵抗があるならば、まだ埋没法で対処するほうがよかったのではないか、と思えるケースも散見されます。

美容外科医に対して申し上げたいのは、よほど瞼の手術に自信があるならば別ですが、中途半端な経験で小切開手術をしているといつかはトラブルを作ってしまうことになりかねないし、それを修正することになれば、患者さんの負担ははかり知れません。

おなかの手術(胃摘出術や胆のう摘出術など)において、浅い経験で腹腔鏡による手術を行うことがどれほど危険なことかは既知の事実であり、今回のことも容易に想像がつくことです。

私自身、小切開で真の腱膜を100%同定できそれに対して確実に適切な処置ができ、その結果100%安定した自然な二重のラインを作ることができる、という自信がいまだにありません。