鼻の注入物
世の中は、昨日あたりから本格的なゴールデンウィークの休みが始まっているようです。
今月の手術でとても教訓的だった鼻の修正手術を3例ほど経験しましたので報告します。
1例目は、鼻の手術(隆鼻と鼻中隔延長)をご希望の患者さんで、既往歴として半年ほど前に某美容外科クリニックで、正体不明の注入物を鼻にうけてその後から鼻の皮膚にかさぶたができ炎症をおこしたエピソードがありました。しかしそこのクリニックでは術後の検診はなかったそうです。
嫌な予感がしましたが、現在は皮膚の状態が安定しているように見えたので、何回かのカウンセリングでリスク等十分説明した後に、手術をおひきうけました。
手術が衝撃的だったのは、皮膚切開をしたときからでした。
通常鼻の手術の場合は、手術中、術者が嫌になるぐらい出血するものです。
ところがその患者さんの場合、鼻先、鼻筋と皮膚剥離をすすめていってもほとんど出血しなかったのです。
そのために手術はとてもスムースに行うことができるのですが、形成外科がわかっている美容外科医ならここで顔面蒼白になるはずです。
そうです、前回の注入によって鼻背の動脈が閉塞していたにちがいありません。
おそらく右の動脈は完全閉塞だったのでしょう、そういわれると術前に右の鼻尖部分にわずかな皮膚委縮と変色がみられていました。
術中何度も何度も創からの出血を確認したのですが、ほとんど出血ゼロ、麻酔薬に止血剤が入っているとはいえ、これほど効いてしまうことは普通ではありえません。
早々に予定の手術を終え、術直後の鼻の皮膚の色を暫く観察していたのですが、少しピンク色かな?という程度までしか回復しません。
結局、翌日検診のときには血行は回復していましたが、それまで久々に生きた心地がしませんでした。
きっと注入後の動脈閉そく後、半年間で側副血行ができていたから回復できたのだと思います。
注入物恐るべし、です。
あとの2例は、次回にでもお話しします。