目頭側の小切開の術後修正
先日、他院で行われた「小切開」の修正をおこないました。
従来の「小切開」の修正と異なるところは、過去に2回の小切開を別々のクリニックで「目頭側」と「目尻側」にわけて受けておられたところです。
その2か所のクリニックの名誉のために申し上げておきますが、外観的にはほぼ問題のない二重ができていました。
患者さんの訴えは、下垂症状です。
術後から瞼が重いことと夕方になると上瞼に窪みができて、3重瞼になることもあったようです。
以前、他院の小切開の術後修正で挙筋腱膜が切断されていた症例があり、この方も同じようなことが起こっている可能性があると考えました。
修正手術は、前回の皮膚切開をもう一度切開し慎重に瘢痕を分け入って、解剖学的にメルクマールとなる「瞼板」「挙筋腱膜」「眼窩脂肪」などを同定していきました。
予想通り、目頭側の挙筋腱膜が横方向に切られていてミューラー筋が露出していました(簡単にいえば挙筋腱膜が瞼板からはずれていました)。
ここを修復した段階で、患者さんに目を開けてもらい、下垂症状の改善を見ることができました。
それ以降の手術は通常の挙筋腱膜を固定した「全切開」と同様に行いました。
目尻側は単純に皮膚固定が瞼板から外れてゆるんでいるだけでしたので修復は簡単でした。
以前から「小切開」は、術野がせまく解剖がよくわからない状態での手術となるため、よほど熟練した医師でなければやらないほうがいいのではないかと申し上げてきました。
さらに今回修正してわかったことは、なかでも目頭側は挙筋腱膜と瞼板の関係にバリエーションが多く目尻側よりも複雑であるため、この部分の小切開を行うためには瞼の解剖についてしっかりした知識と手術の経験が必要であることでした。