表情筋のバランス
ボトックス注射はいろいろな意味で画期的な美容治療手段です。
従来美容外科で行われてきた治療は、基本的に「静的改善」でした。
表情のない状態で若々しくきれいに見えることが治療の目的であり、結果になります。
つまり表情を作ったときにどのような状態になるかは、考慮されていません。
以前他クリニックで下まぶたの若返り目的の下眼瞼切開をお受けになった患者さんが、笑った時に怖い顔になって困ったという訴えを聞いたことがあります。
表情をつくらなければ若々しい下まぶたであることは自覚されていました。
このように美容外科手術は表情の動きを計算に入れて手術するのは非常に難しいのです。
そのなかでボトックスは表情の動きを制御して治療効果を出すという点が今までの美容治療と根本的に違うところだと思っています。
ボトックスの治療効果を確実なものにするためには、顔面にある表情筋の解剖学的位置関係と動的なバランスを知って治療する必要があります。表情筋についてはこちら。
表情筋には動きが拮抗しているものがあります。お互いにひっぱりあってバランスをとりながら微妙な表情を作り出しているのです。
数ある表情筋のうちどれかひとつでもボトックスで動きを止めてしまうとそのバランスが崩れ、全く予期せぬ治療効果が出ることがあります。
たとえば皺眉筋と前頭筋は拮抗していてどちらか一方を止めると片方の働きが相対的に強くなります。
これは、ボトックスが筋肉内にきちんと注入されているという前提で起こりますので、ボトックスが効いていないほうが皮肉にもかえって表情のバランスを崩す可能性が少なくなるということが起こりうるのです。