手術の魔力
美容手術をもとめて当クリニックに相談に来られる患者さんは相変わらず多いのですが、うちのクリニックではそういった患者さんに、本当に手術を受けたほうがいいかどうかというところからお話しするスタイルをとっています。
そういった患者さんの中に「先生は手術をするのがお嫌いなのですか?」という方もいます。
最初からあまり手術を勧めることをしないからだと思うのですが、決して手術が嫌いというわけではありません。
逆に、個人的には手術が大好きなほうだと思っています。
自分でいうのもなんですが、いったんお引き受けした手術は自分のベストパフォーマンスを心掛けていますし、たとえ一日がかりの手術であっても最後まで丁寧に施術をやりぬくことには誰にも負けない自信もあります。
ただ、私自身、手術をすることが好きだからという理由で患者さんに手術を勧めるのは、自身のポリシーに反しています。
そういった「私情」で、手術を勧めるのは、外道だと考えています。
患者さんも同じですが、手術の威力、もっと言えば手術の魔力に負けてしまって、手術をどんどんおしすすめていくと医師もどこかで精神的な破たんをきたす、と考えています。
これは患者さんにとって不幸なことであり、医師にとっても不幸なことです。
何よりも美容外科の手術を愛する医師であれば、手術に慎重であるべきで、手術の適否には私情をできるだけはさまずに客観的に判断しようとするべきだと思うのです。
いい年をした医者がいうのも恥ずかしい話ですが、美容外科の手術に対してはいつでもピュアな気持ちで臨みたいのです。
患者さんの要望する手術に自信がないから手術を勧めないというのは論外ですが、むしろその手術に精通しているからこそ勧めないこともある、そういった医師として残り長くはない手術人生が送れることを願っています。