鼻の手術その29

鼻翼基部プロテーゼ(PNI)の続きです。

この手術のリスクについて説明します。

内容がほぼ学会レベルの話になります。

プロテーゼの位置のずれ、口腔内への出っ張り、サイズ不適合

口唇知覚障害、違和感、感染などです。

当クリニックの過去の統計から、これらが原因での再手術率は3.3%でした。

大部分が医師の技術不足によるものですが、術後の違和感は患者さん側の要因が大きいと思われます。

術後数日は笑った時に唇が持ち上がりにくく感じるようですが、普通は1週間ほどで改善します。他人から見てわかるものではありません、本人が感じるという程度です。

他院の修正例はかなり難しく、特に術後にプロテーゼを安定させるのが困難でした。原因は前回の手術術後の瘢痕によって安定したポケット作成が難しいことです。

プロテーゼの固定に関して、わたしは特別なものはしていません。適正な範囲の剥離ができれば術後の移動はそれほどおきません。

プロテーゼは手に入る専用のものを用いていますが、厚さが7mmまでですのでそれ以上のものは特注になります。

厚みに関しては、鼻翼基部の陥凹の程度によりますが、7mmまであればほぼ対応できます。

あまり厚いものを入れると術後の違和感が増す傾向にあります。

プロテーゼは左右独立したものを使っていますが、左右が鼻下でつながっているタイプのものもあります。

これは慣れていない術者でも適切な位置に挿入しやすいのと鼻柱口唇角を増大させる効果もあると思われますが、他院の術後でかなり悲惨な結果になっていた症例を見ていますのでうちでは使っていません。

「リスク」と「得られる効果」を合わせて考えても、この手術は有効性があると思います。

ただし形成外科トレーニングで顔面骨の解剖を熟知し顔面骨手術の経験があるドクターで、なおかつこの手術になれている術者が行えば、という条件付きです。