美容外科手術でトラブルを避けるために34
形成外科専門医を取得してこれから美容外科をマスターしていこうと考えている医師に向けて書いています。
鼻中隔延長術(以下SEG)で用いられる移植材料について書いています。
人工物で基準を満たしているものに出会ったことがないことを書きました。
あくまで私の他院修正経験に基づいています。
それ以外の選択肢には、autograft、allograft、 xenograftなどがあります。
autograftは言うまでもなく自家組織移植です。これについては本題になりますので後々に詳しく書きます。これ以外の組織移植は他家組織移植といわれます。
allograftは他家組織移植のうちの同種組織移植で、医学的な知識が少ない患者さんにはいわゆる移植手術(心臓とか角膜とか)がこのallograftにあたると考えるとわかりやすいと思います。
SEGでは「保存軟骨移植」と言われているようですが、要は他人の死体から採取した軟骨です。
「死体」と聞くと驚かれるかもしれませんが、欧米ではこのような材料が移植用に用意されています(国産はありません)。
人工物に比較して、人間のものですから多少の異物反応は見られるかもしれませんが比較的安定しているようです。
この手術を受けられた患者さんの修正経験もありますが、人工物よりは周囲の瘢痕形成や変形はかなり少ない印象です。
しかし軟骨移植によるSEGで自家組織移植と同種組織移植を同時に受けられた患者さんの修正をした経験から言えば、同種組織移植軟骨周囲は自家組織移植軟骨に比べると異物反応が強くみられ、周囲の組織から剥離するのが困難です。
こういった術後の状態をみると同種組織移植をSEGに積極的に取り入れていく気にはあまりなれません。
もう一つの他家組織移植である xenograftは異種組織移植になり簡単に言うと人間以外の動物の組織を移植する手術です。
一時SEGに医学的な処理を施した豚軟骨が使われてきましたが、結果が不安定で今ではあまり用いられていないようです。
結論として、トラブルの少ないSEGを目指すのであれば、自家組織移植が一番です。
何らかの事情でどうしても他家組織移植を用いるのあれば、患者さんに対して術前に十分なリスク説明が必須です。