美容外科手術でトラブルを避けるために47

鼻の手術でいかにトラブルを避けるか、という本題に入っていきます。

患者さんが何を求めているか、どういう鼻になりたいか、その希望をかなえることはもちろん重要ですが、今私が伝えようとしているレベルは術者が自分の中でイメージを持つこととそれを手術で実現することです。

そのレベルをクリアできれば、患者さんの希望をお聞きしてその実現をお約束できるレベルになります。しかしそこでひとつ問題があります。

前回の記事で書きましたように「鼻の手術」は「バランス手術」と書きました。

ところがこのバランスを考えることは最も難しく、経験が必要になります。

患者さんには申し訳ないのですが、鼻のカウンセリングをしていて一番感じるのは患者さんが当初考えている鼻の手術のほとんどが的外れだということです。

ですから経験の少ない美容外科医が患者さんの要望をそのまま聞いて手術をすると往々にしてバランスの悪い鼻になることが多いのです。

しかし患者さんにはそういった事情がわからないので、その美容外科医の腕が悪い、という結論になってしまいます。

こういった行き違いを避けるためには、我々は経験を積み重ねることが必要です。

自分が手掛けた手術の術後、他院の術後に限らず手術を受けた患者さんの鼻をよく観察し、何が悪かったか、患者さんがどこに不満を抱いているかを考えることです。

1例を上げますが、鼻先を細くしたい、という要望に対して両側の鼻翼軟骨を糸で寄せて縫合するということを行ったときにできる「ピンチノーズ」をどう考えるか、みていきましょう。

正面から見て物理的には鼻先の幅が狭くなりますが、両側の鼻翼溝が深くなり横から見ると丸い鼻先になる、そんな鼻先を作って満足している術者になっては手術の進歩は期待できません。

どの角度から見てもすっきりした鼻先に見えることが重要で、鼻先をつまんだような不自然な鼻先は避けなければいけません。

手術でそれが実現できるかどうかを先に考えるのでなく、まずそういった鼻先がいいよね!と思える感性を大事にしなければ、鼻先の手術がうまくなることはありません。

特に鼻の手術における重要なポイントですが、術者の頭にないイメージは決して手術で作り出すことはできません。

逆に術者の中に、強烈な術後イメージがあれば、手術術式にかかわらず術後に実現できている可能性が高まります。

まず正しい術後のイメージを持つこと、次にそれを100%実現できることが鼻の手術では特に重要なのです。