信頼を得る努力

車の話を続けます。アメリカの日本車への信頼が崩れてきているようです。

日本車はその安全性・高品質が売りだったのは、ユーザーの信頼に支えられていたからです。

しかしこの信頼は一朝一夕で得られたわけではありません。

日本がアメリカに車を輸出し始めた1960年代に現地に派遣されたメーカーの人は、とても苦労されたということを以前テレビで見ました。

アメリカで寒い日にはエンジンのかかりが悪いという苦情が相次ぎ、朝ユーザー宅までエンジンを温めるお湯をもってまわったという逸話もあったようです。

そういった地道な努力を何十年と続けた結果、今の日本車の信頼は築き上げられていったのです。

その信頼が今失われかけているとすれば、信頼というものは築き上げるには長い年月大変な努力がいるのに、失うのは一瞬であるということを思い知らされます。

美容外科業界も全く同じです。私のクリニックは、幸い今のところリピーターの方の信頼に支えられてどうにかこうにかやっていけていると思っています。

しかしその信頼も一瞬にして失墜してしまうことがあるのだといつも肝に銘じています。

現在、1~2カ月に1回スタッフとともにクリニックの中の衛生面、安全面について見直すミーティングを行っています。開業以来特に気をつけているのが、薬や医療材料の保管・使用状況についてです。

この面では週1回大学で外来をしていますので、そこのスタッフから最新の情報を手に入れて参考にしています。現在、薬の保管方法などについては大学が独自のガイドラインを作成しそれにしたがって厳密に施行されています。

それを参考にしてクリニックでの安全面も考えています。

たとえばほんの2~3年前までは、注射の前にする皮膚のアルコール消毒綿はその日の朝ステンレス缶に綿花と消毒液でまとめて作っていましたが、これは1日に何回もこの中に手を入れることが衛生面でよろしくない、ということで今ではやっていません。1枚1枚梱包された消毒綿を使っています。

私のクリニックでは基本的に一人の患者さんに使用するすべてのものは新しい物(直前に初めて梱包を解いたもの)を使うということを方針にしています。

こちらのほうがコストや手間は当然かかるのですが、医療の安全のためであればコストをかけてもかけすぎはありません。

患者さんの目に触れないことでも患者さんからの信頼を裏切らないように努力を続けなければいけないと考えています。

何度も申し上げますが、私は「健全な経営の上に健全な医療はある」と思っています。