脂肪吸引術
脂肪吸引で死亡事故、というショッキングなニュースがありました。患者さんのご冥福をお祈りします。
現時点では手術と死亡の因果関係がはっきりしないようですが、腸管に穴?が開いていたという報道もあるようです。
もしそうだとすれば、吸引管の操作による腹壁・腸管穿刺、その後の腹膜炎で命を落とされたということになります。
我々が脂肪吸引による合併症として認識しているリスクにはいろいろありますが、教科書的に申し上げれば「腹壁損傷」というのはありません。
脂肪吸引術の術後に死亡するリスクはゼロではありませんが、我々が考えているものはこういった原因とは全く違うものです。
これは、脳外科の手術でいえば、手術中に病変部位以外の脳損傷を与え死亡させてしまうリスクと同じです。それは手術のリスクとはいいません。
つまり通常の美容医療行為とはかけ離れている初歩的レベルでの過失事故の可能性があります。
脂肪吸引は美容外科医の間で安易に考えられていることが多い手術で価格も安価に設定されています。安価に手術を受けられることは患者さんにはいいことかもしれませんが・・・無責任な手術では困ります。
安全にそして仕上がりもきれいな脂肪吸引には、美容外科医としてそれなりの経験と慎重さが必要です。私自身いまだに脂肪吸引はむずかしい手術だと思っています。しかも体力がいる手術ですからいつまでもできる手術とは思えません。
「根こそぎ脂肪吸引」などというコピーを見るたびに愕然とします。どうかこれ以上脂肪吸引を悪者にしないでください。