形成外科と美容外科1

形成外科は美容外科の必要条件ではありますが、十分条件ではないと考えています。

形成外科と美容外科には共通するものはあったとしても根本がちがうからです。

手術ひとつとってみても、形成外科の手術にははっきりした目標があります。形成外科手術は損なってしまった状態の回復ですから、術者も患者さんも目標が一致しわかりやすいです。

ところが美容の手術は術者が考えていることと患者さんのご希望が最初から一致しているとは限りません。一致しないのが普通といっても過言ではありません。

患者さんから漠然としたご希望、たとえば「目をぱっちり」とか「きゅっと小顔に」といったご希望があったとします。

こういったご希望の患者さんの話を詳しく聞いてわかるのは、おなじご希望でもほかの患者さんと内容が全く同じだったという人は一人もいない、ということです。

患者さんの最初のご希望が、話の途中で実は患者さんご自身の勘違いだったということもあります。

このように目標が揺れ動きなかなか定まらないなかで、それでも術者はなんとか患者さんのご希望をくみ取っていく、というプロセスが美容外科には必ず必要になります。

このプロセスには、術者のいままでの経験、インタビューのスキル、根気、提案力、コミュニケーション能力、謙虚さが必要とされるのです。

この訓練には形成外科のトレーニングだけでは難しいと考えるのです。

形成外科専門医だからといって、それですぐに美容外科(手術を含めて)ができると考えるのはあまりに無謀です。

しかし、そうかといって形成外科のトレーニングは必要ないかと言われればそうではありません。美容外科の診療のなかで形成外科での訓練が必要である場面が必ずあります。それについては次号で。