手術の技術より大事なもの

先日、美容外科医にとって一番必要でだいじなものは何ですか、と聞かれました。
私は迷わず、患者さんのお話をよく聞くこと、とお答えしました。
手術をするから手が器用でなければいけない、とか美容外科だから美的センスが必要だとか思われがちですが、それよりも大事なことは「患者さんのお話をよく聞くこと」だと思っています。
ちょっときれいごとを申し上げているように聞こえるかもしれませんが、その意味は一般的にいわれる「人の言うことには耳をかたむけよ」とはちょっと違います。
平たく言えば「お話を聞くこと」は一つの「診療技術」だと思います。
まず患者さんのお話をよく聞いたのち、目の前の患者さんの「ご希望」はどのあたりなのかを自分の経験から想像してみます。
そしてこちらから患者さんに問いかけをします。それに対する患者さんの反応、そしてお話を注意深く聞きます。
それから先ほどの想像したことが違っていないか考えます。違っていれば修正してまた問いかけです。あるいは簡単な施術を受けていただいたのち、患者さんのちょっとした反応や感想を伺います。
そこでその施術が患者さんのご希望に本当にそえていたかを判断します。
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美容外科の医療は本来そういったやり取りの連続です。我々美容外科医は日々の診療でこういった「技術」を磨いているのです。
目に見える「手術の技術」と比べると地味で、こういった技術が学会で発表されることはありません。こういったやり取りの技術が優れている先生のところには全国から患者さんが集まってきます。(そういった先生を何人か存じ上げています。)
学会で優れた手術を発表する先生だけが名美容外科医とは限らないところが、美容外科(に限らず医療全般に言えるかもしれませんが)の本当に面白いところなのです。