一つの博士論文が出来上がるまで
以前は、博士論文を提出して医学博士号を取得することが、医師として一つの目標でした。
今は、専門医を取ることのほうが重要とされる風潮がありますので、博士号にこだわる若い医師は少なくなりました。
私が30代(1990年代)のころは、ちょうどその過渡期にあたっていたため、博士号も専門医も両方とった医師が多く私もその例外ではありません。
前回の記事にも書きましたが、博士号の論文を作成するためには、日頃の診療の傍らでその準備をすることになり、それははかなり大変な作業になるため、出来上がるまでに数年かかるのが普通です。
論文の内容の真偽は、その結果がだれが行ったとしても同じ結果が出て(普遍性)、なおかつ何回でも同じ結果が出る(再現性)ことで証明されます。
過去に、私の博士論文のきっかけになった外国の論文の内容を日本で再現できないため、わざわざその人のラボ(オランダ)まで渡航し実際に現場を見せてもらった、という経験があります。
結局、再現するには論文に書かれていない、ちょっとした工夫が必要だったということがわかり、帰国してからはその後の自身の研究も順調にはかどった、という経緯があります。
いずれにしても世界のなかでまだ誰も発表したことのない研究内容を思いつき、科学的に実証し、それを論文にし、世界的な雑誌に掲載されるまでにはとても困難な長い道のりが必要です。