三つの誘惑
時々、美容外科の先人の言葉を思い出すことがあります。
まだ私が形成外科医として大学病院に勤めていたころ(20年ほど前になります・・・)、地元名古屋での学会で特別講演がありました。
演者として招待されていたのは、当時、北里大学の形成外科美容外科の教授をされていた塩谷先生でした。
以前から、塩谷先生のことは個人的に存じ上げていたのですが、講演の内容が「美容外科を志す者の心得」的なものだったので非常に楽しみにしていたのを覚えています。
塩谷先生のお話は、外見と同様、とても紳士的な内容で始まったのですが、話の中盤に差し掛かった時にとても衝撃的なことをおっしゃったのです。
先生の容貌からは想像もつかない内容だったので20年も経った今でもはっきりと覚えています。
その内容とは・・・、
美容外科で開業しようと思うのならば、次の三つの誘惑に気をつけなければ、医者としての身の破滅につながります。
その三つの誘惑とは
1、お金の誘惑
2、女性の誘惑(これは男性の美容外科医だけに当てはまります)
3、薬物の誘惑
医者のなかでも特に美容外科医は要注意です。
・・・というものでした。
実際に美容外科を専門にやっていこうと考えた出したころからずっとこの塩谷先生の「お言葉」がことあるたびに思い出されました。
開業前の15年ぐらいの間、いろいろなクリニックで武者修行をしていたのですが、実際にこの三つの誘惑にむしばまれていく医者を何人か目の当たりにしました。
カネの亡者になり果てたチェーン展開の美容外科クリニックのオーナー、愛人はもちろん何回も離婚・結婚を繰り返す美容外科医、薬物中毒で医師免許をはく奪された美容外科医(その人は形成外科医のころ、研究に非常に熱心で、本人の弁ではもうすぐノーベル賞がとれそう、と私に熱く語っていたのですが・・)。
彼らのその後の人生の顛末は、人生のどん底に落ちて行方知らずになった人もいれば、相も変わらず同じことを繰り返していまだに現役の美容外科医という人もいます。
小説か映画に出てくるような破滅人生を地で行くような美容外科医は本当に存在していたのです、塩谷先生の忠告は嘘でも大げさでもなかったのです。
私自身は幸か不幸か、そういった意味では根っからのつまらない人間ですので、こういった誘惑に駆られる機会もなく今日まで無事に(?)やってこれたようです。
これから美容外科医を志す若いお医者さんへ・・・この「三つの誘惑」にくれぐれも気をつけてください。