美容外科医に数学的能力は必要か

医師は一生勉強が必要と言われます。

研究の分野に進む医師(山中教授のような医師)はもちろんですが、医療は人のいのちにかかわる仕事ですから一生勉強が必要であるのは当然と思われます。

われわれ美容外科医も、一生の勉強(医学の)が必要であり、ほかの科のドクターと同等もしくはそれ以上に高い教養と能力が必要とされる科だと思っています。

顔や体の解剖や人体の生理についての知識はもちろんですが、一人の患者さんの心の問題、社会情勢、民族の歴史的背景、宗教、慣習などとても広い知識が美容医療を実践していくうえで必要になります。

学生時代を振り返ると一見医学と無縁と思われる学問の知識も、美容外科医となったいまならそれがどれほど重要か(むしろ直接的な医学の知識よりも)がこの年になってあらためてわかるようになってきました。

しかしそういった広い知識や見識以上に、われわれ美容外科医(だけに限らず)に必要なものは何かといえば、それは「論理的思考力と客観的分析力」だと思っていて、それは「数学」の能力そのものだといえます。

私はずっと医師になってから最近まで、中学高校6年間の数学は医学に必要なのだろうかと疑問に思ってきましたが、皮肉にも開業して一人で手術などをするようになってからその意義が少しずつわかるようになってきました。

日々の診療において一番のよりどころは、先ほどの論理的思考と客観的分析力によって裏付けられた確信が唯一のものなのです。

まず仮説が生まれ、結果の想定、実践、結果の評価、分析そしてまた新たな仮説へと繰り返すことで、より洗練された安全で確実な美容医療につながっていきます。

純粋な「数学的思考」と異なるのは、医学にはそこに「倫理」が加わることぐらいで、根幹は変わらないと思っています。

この年になって「医学になぜ数学(的思考力)が必要なのか」という疑問に少し答えがわかってきたように思います。