学会の統一

以前から記事に書いていますが、日本の美容外科には二つの同名の日本美容外科学会があります。

英語表記にするとJapan Society of Aesthetic Plastic SurgeryとJapan Society of Aesthetic Surgery、省略するとJSAPS とJSASの二つに区別できます。

今、二つの学会をひとつにしようという動きが双方から出てきつつあります。

その理由は、同名の異なる学会が二つあるということは日本の医学会として認められない、つまり共倒れで利益にならないというところが発端のようです。

私は誤解を招かないように学会はひとつにしておいたほうが患者さんの利益になると考えているのでこの流れには反対しておりません。

しかしこの問題を解決するための一番肝心な議論がないがしろにされるのであれば、結論を急いで出すのはよくないと考えています。

それはつまり「美容外科」には本当に「形成外科」の修練が必要なのか、という1点であります。ここをはっきりせずに政治的な理由で学会統一を勧めることには反対です。

私の意見は以下のようです。

本当の「美容外科」手術には形成外科の修練が必要とされる、それ以外の美容治療には必ずしも「形成外科」は必要とされない、ということを診療の場で痛感しているので少なくとも「美容外科」全般を標榜されるのであれば「形成外科」修練は必要になるであろう、ということが1点目。(ただし形成外科すべてを修練する必要はなく、顔面を中心に体表解剖の知識を学び、そのうえで少なくとも創傷治癒の知識、生体医療材料の正しい取り扱いかた、創傷感染の処置の仕方の基本を学び、数例の実地経験を積んでおけば十分ではないかと思う)

それと「形成外科」の専門医を持っていれば「美容外科」が普通にできるはず、というのは形成外科の愚かな幻想である、というのが2点目。

それらをきちんと踏まえたうえで二つの学会が統一されるのは問題ないが、現実的に「美容外科」専門医と名乗るには相当なハードルを設けなければならないだろうと考えています。

それがなされるのであれば、患者さんに良好な美容医療を提供するうえで正しい情報を発信するという学会活動の一番大事な部分が担保されるのではないでしょうか。