学会発表をする意味
現在学会、雑誌の原稿の準備の真っただ中です。これから詰めに入っていきますが、ここからが実は一番つらいところです。4連休はすべてこの準備になりそうです。
先日、ある人に「そんなにしてまで学会とか原稿発表とか、なにかメリットってあるのですか?」と聞かれました。
その理由のうち、ひとつは私自身のためにしている面があります。医師とはいっても一応科学者のはしくれです。すべての医療に科学的なアプローチを試みることは医師に課せられた義務になります。
科学には「原因」があって「結果」があり、眼の前で起こった事象に対してその原因はなにかということを常に考えなければいけません。またどうしてそうなったかという「考察」もする必要があります。
我々は学会活動を通じて常にこうした思考訓練をしているわけです。自分の考えが非科学的な独善に陥っていないかを他の医者からの批判を受けることでチェックしているわけです。
もう一つの理由として、社会に貢献するという面があります。治療結果を多数集めることである一つのことがやっとわかることもあります。その結果を発表することで、より真実に近いことが明らかにされます。それが将来の医学の発展につながるわけです。
私がまだ研修医あがりの頃に、指導医の先生から「手術のやりっぱなしは外科医としては最もやってはいけないこと」と言われ、学会発表をすることの必要性を叩き込まれたことがあります。自分が手術をした以上その結果には、患者さんに対して責任を持つことは当然として、医学全体に対しても責任を果たしていく姿勢が必要とのことでした。それ以後ほぼ毎年ですが、ひとつでも発表することを心がけるようにしてきました。
しかし現在自分自身で開業する身になって、なおこの義務を果たしていくことは結構たいへんなことなのだとつくづく感じさせられる今日この頃です。