美容外科手術でトラブルを避けるために61
鼻の手術のなかで脂肪注入の実際の注意点について書いています。
注入できる脂肪が用意でき、実際に注入の時に気を付けることはとにかく少しづつまんべんなく注意深くすることにつきます。
他院で脂肪注入後に感染した症例の治療に20年ぐらい前に当たったことが何度かありますが、とても乱暴な注入で1か所に大量に注入されていました。
幸い現在では自動的に脂肪を少量ずつ分けて注入できる器械があるのでこういったことは起こりずらいのではないかと思っています。
注入後の患部の安静に気を付けるなどのケアが必要ですが、術後3か月のあいだ少しづつ脂肪量が減少していきます。
これについては以前にも書いたように我々の論文が形成外科学会誌に掲載されていますので参考になさってください。
脂肪注入に限らず、美容外科手術の中ではっきりしたエビデンスのない手術をする場合、一番大事なのは思い付きでいろいろな手術をすることよりも一つの手術法で術後の経過をじっくり観察して客観的指標をもって検討する姿勢が大事です。
ほかでやっていない手術法を自慢するドクターもいますが、そういった方法を発表するには最低でも術後2~3年できれば5年以上の術後観察期間を経てから発表してほしいものです。
こういったことをしないで「新しい手術法」などとHPで自慢していても、それは患者さんは騙せても我々ドクターをだますことはできません。
そういった意味でいうと本当の意味での手術法のイノベーションはそれほど頻繁に起こるわけではありません。
何もないところから突然新しい手術法ができることなどほとんどありません。
あるとすれば、この脂肪注入術のように従来行われてきた手術法に対して地道に改善が行われたのち新しい手術法として確立していくパターンです。
若い医師にとって、一見派手で真新しく見える手術のほうが魅力的かもしれませんが、患者さんの利益になりトラブルの少ない手術はそうでないところにあります。