肋軟骨を使うと軟骨が透ける?
鼻の手術のカウンセリングをしていると
「肋軟骨を使うと、のちのち軟骨が透けてくるんですよね?耳なら透けないんでしょうか?」
という御質問をよくいただきます。
これはその通り、とも言えるし、そうでもない、とも言えます。(曖昧で申し訳ありません。)
鼻の手術を検討して、SNSやブログ、ホームページなどで情報収集していくと、
- 鼻先をある程度高くしたり向きを変えたりするには、鼻中隔延長という手術が必要。
- 鼻中隔延長には、ざっくりいうと二通り、肋軟骨を使うやり方と耳軟骨を使うやり方がある。
- 肋軟骨を使って鼻中隔延長をすると、長い時間が経ってから軟骨の形が皮膚に浮き出てくることがある。
このような情報に行き着きます。
これらは大筋では合っていますが、少し深掘りして考えてみましょう。
軟骨の形が浮き出る?
まず、「軟骨の形が浮き出てくる」とはどういう状況でしょう?
それは当然、皮膚が薄くなり、皮膚の直下の軟骨の形状が凹凸となって表面に現れている、ということです。
それでは皮膚が薄くなる原因はなんでしょう?
それは「張力が長期間かかっていること」と言えると思います。
つまり、鼻先の皮膚がピン!と張っている状況が長い間続くと、皮膚が伸ばされて薄くなっていってしまう、ということです。
鼻先が高くなるように軟骨を構築した場合、鼻先の皮膚は奥から押し上げられることになりますね。
雑な説明ですが、皮膚が薄くなる主な原因であることは間違いないと思います。(複数回手術している場合などはさらに別の要因も加わります。)
ここで鼻中隔延長という手術がどういう手術なのか考えてみます。
テクニカルな説明を抜きにすると、
鼻中隔延長術とは、鼻の中に強い支えを作る手術 です。
鼻先を高く、あるいは長くした場合、鼻先の皮膚には元に戻ろうという力がずっとかかり続けます。
その力に支えが負けてしまえば、いわゆる「後戻り」が起こってしまい、
「手術した直後は良い形だったのに、だんだん戻ってしまった。」「だんだん低くなった。」「曲がった。」
ということになるわけです。
では鼻中隔延長で強い支えを作るとどうなるか。
十分に強ければ後戻りは起こらず、その反面、皮膚には負担がかかり薄くなってしまう。
ということが起こってしまうのです。
ということは、肋軟骨を使っても支えが弱ければ後戻りするし、耳軟骨を使っても強い支えを作れれば軟骨が透ける可能性が生じるわけです。
材料として、一般的には肋軟骨の方が強度があるので、タイトルの疑問になるということです。
自分の考えと工夫
簡単に言えば、理想の鼻の手術は
- 後戻りしない
- 長期間を経ても軟骨が透けない
これを両立することです。
後戻りを防ぐのは技術的な問題がメインです。
軟骨の採り方、加工の仕方、組み立て方、など。
耳軟骨を使った場合でも肋軟骨並みの強度を持たせるような工夫を数多く行なっています。(これにについて詳しくはまた後日)
軟骨を透けさせないために自分が心がけている点は
- 無理な延長をしない。(これは大前提)
- 軟骨を丁寧にカッティング、場合によっては柔らかい組織を上に被せる。
- もし軟骨が透けたとしても、不自然な形に見えないような形に調整する。
- 鼻先だけでなく、鼻翼基部など周囲と一体に高くしていく。
このあたりでしょうか。
ただ、残念なことに最大限の工夫をしたとしても、1年、2年経つと少し気になってくる、という患者様はみられます。
そうした時にも慌てず、せっかくの綺麗な鼻の形を大きく変えずに対処できるような方法、
手術計画の段階でそこまで考えておくようにはしています。
これから鼻のカウンセリングに行かれる方は、その辺りも担当ドクターに聞いてみると良いかもしれませんね。