美容外科手術でトラブルを避けるために33
鼻における人工物の問題について書いています。
よく患者さんから「シリコンのような人工物はトラブルが怖いから入れたくないです」ということを聞かされます。
これは正しい面もありますが、実際にはそれほど単純な問題ではありません。
前回書いたような「人工物」を人体に挿入するときに考えることは3つあると申し上げてきました。
1については我々現場の医師が判断することではないので2と3についてケースバイケースで考えていくことになります。
実際に美容外科の現場で人工物を使用するときは常にこのことを検討しながら手術法を考えていくことになります。
ここでやっと「鼻中隔延長術」に話を戻しましょう。
鼻中隔延長術で移植する部位は鼻中隔軟骨と軟骨膜の間です。
血流としてはそれほど悪くはない部位です。力は加わりますが、周囲が常に動いている部位ではありません。移植部位は鼻腔粘膜の直下ですから深いわけではありません。
期待される役割ですが、鼻先を支持するという重要な役割があります。長期的に見て強度がなくなるようなものではちょっと困ります。移植材料の形が変わるのも困ります。鼻先をコントロールするうえで要になる移植物ですから、術後も安定していてしかも扱いやすい状態を保っていることが必要です。
長々と書いてきましたが、鼻中隔延長術で人工物を用いるには上記の条件を満たしてなければいけません。
今までに人工物で鼻中隔延長術が行われた症例の修正手術をしてきた経験でいうとそれを満たしたものは一つもない、というのが結論です。
シリコンでは鼻先を支える強度が不足しています。最近用いられている人工材料は吸収性のもののようですが、強度も足りないし変形や周囲との癒着が強く、修正手術を極端に難しいものにします。
そもそもこういった人工物をもちいて鼻中隔延長術を行っているクリニックは術後のフォローアップをして場合によっては修正手術も責任をもって行っているのでしょうか。
術者にとってこのような自殺行為のような手術をあえてすることは考えられません。
唯一考えられるのは、そういった人工物を使った鼻中隔延長術をするドクターは「術後のことなんかおら~知らね~、手術ができればいいのさ~」という「手術やり逃げ確信犯」です。